【お題でSSトピ】 今回のお題:『夜風』 ・400〜...
【お題でSSトピ】
今回のお題:『夜風』
・400〜800字程度
・版権、エロ、グロなど投稿規約に反する内容以外であれば何でもOK
以前にあったお題トピが楽しかったため、勝手に引き継いで立てさせてもらいました。
最近は帰り道に肌寒く感じるようになったなと思って今回のお題を思いつきましたが、季節感はあってもなくても、お好きようにお書きください〜!
参考→https://cremu.jp/topics/28462
みんなのコメント
すっかり日が短くなり、暗くなるのが早くなった。朝晩の空気の冷たさに、嫌でも季節の移ろいを感じる。
朝からどんよりと薄暗く、ぐっと気温が下がったある日のことだった。夜風が身に染みる、というのはこういうことを言うのだろうと、しみじみ思う。
気温が下がったから、夜風が当たり冷たいから。それはもちろんだが、きっとそれだけじゃない。
『もう、会わない。……ううん、会えない』
足元から崩れそうになるのをなんとか堪える。
予感はしていた。あなたの心は、もうしばらくここにはなかったから。
夏の終わりと共に、緩やかに少しづつ離れていった。それを止められなかったのは、紛...続きを見る
ベランダに出ると夜空には満月一つ、散らばる星々無数。月の光が強いのか、青く浮かび上がる一帯は夜行性でない生き物の私の目にも把握が出来る。
風が身体を包んでいった。何色の季節のものか、今はよくわからない。
セミが飛んできた。イテッ! いつの間にか足元にはセミが何匹も落ちている。お亡くなりになったならまだ良かったのだけれど、セミ爆弾! 他所でやって!
オマケの蚊! もーっと他所に行って! くらえぃ! 千手観音拍手!(周囲一帯をやみくもに両手で叩く事。今思いついた。)
……ゼイゼイ、ああ、なるほど今のは『夏風』って事ね。
今年は時期を過ぎても暑い日が多かったか...続きを見る
マンションの開いたカーテンの外で赤い光がふくらむ。小さく灯っては消え、消えては灯り、満開の都会の夜景に花を添えている。
結城は濡れた髪をそのままにガラス戸を開け、裸足でベランダに出た。むき出しのつま先から、コンクリートの冷ややかな拒絶が一瞬にして全身を駆け巡る。
「さっむ!」
声が闇の向こう側にまで通り抜ける。結城は触れた手すりの冷たさにも驚いて、指先を両脇の下に差し挟んだ。
赤い光が隣から消える。代わりに白い煙が夜空に広がり、唇から煙草を離した櫂がくつりと笑った。
「そんな格好しといて文句言うなよ」
「急に寒くなりすぎなんだよ。まだ冬服持ってきてねえし」
「だからって…...続きを見る
凍てつく程でも無い、寒い風が吹く夜のことだった。誰もが振り返る程でも無い、どこにでも居るタイプのイケメンの俺は漫然と空を見上げた。
「星、めっちゃ綺麗ッスね」
背後に立つ男は俺の言葉には答えず、しかし同じように空を見上げたのだろう。ジリ、とコンクリートを踏み締める靴の音が聞こえた。
遮るものが無いビルの屋上で、夜風がダイレクトにぶつかるせいで酷く寒かった。結束バンドで締め付けられた親指の付け根から先は、特に。
「言い残すことは?」
「あ〜……。こっからでも入れる保険ってあります?」
漫画みたいにありきたりな言葉を投げかけられた俺は、漫画みたいにありきたりに死んでいくんだと思...続きを見る
「池の水全部抜いたみたいなやつあるじゃん? あれみたく、地球から水全部抜いたらどうなるかなって」
もうすぐ真夜中に近い夜。彼と並んで、人っ子ひとり歩いていない大通りをゆっくりと下っていく。古い商店が立ち並ぶ街は静かに眠りにつき、街灯と自販機が時折ぽつりぽつりと光を投げかけている。
「抜いた水はどうすんだ」
「うーん……月にでも移すか。それで、だいたい半分くらい抜いたら、……」
荒唐無稽な話はいつものこと。それに肉付けして、こいつなら本当にやりかねん、と思わせてくるのも。でも、いつも楽しみにしていたこの時間は今日で終わり。彼は明日の昼の出発式ののち、この街を発つ。宇宙の彼方を開拓する一団...続きを見る
秋霖の続く10月上旬、傘を叩く雨音を聴きながら夜の繁華街を抜ける。私の手にはアツアツのチーズ牛丼とヒヤヒヤの缶ビールが入った袋が握られていた。袋の中身──つまり牛丼──が雨で濡れないよう、大事に大事に握り締めて歩く。
──本当はカレーが食べたかった。
私の背後で《ソレ》が言った。不満の滲む声だった。
──今晩はカレーの気分だったのに。
──トマト鍋でもいい。チーズとご飯も入れてリゾット風にしよう。
──ボクはハンバーグが食べたい。
──ビーフシチューパイもいいな。冬の味がする。
──まだ秋になったばかりなんだ。焼き魚と芋の天麩羅はどうだろう。
口々に唱えられる...続きを見る
焼肉には白米と決まっている。だというのに、米がない。
コメ主はからっぽの米櫃に舌を打った。
現在時刻は18時15分。今晩はコメ主1人で『おうち焼肉』だ。ふるさと納税で入手した霜降り和牛が今か今かとコメ主を待っている。付け合わせのサラダも和牛に合う酒も用意した。食卓には遠赤外線式無煙ロースターも設置されている。『おうち焼肉』の準備は万端である。──米がない、ということ以外は。
焼肉には白米が必須なのだ。白米のない焼肉など焼肉ではない。
口の中でとろける牛肉に舌鼓を打ち、生ビールを飲みながら、炊き立ての白米をいただくのが食への礼儀というもの。
コメ主は覚悟を決めて立ち上が...続きを見る
夜風吹き付けるアパートの外廊下、薄暗い電灯の下でオタクは鞄を漁っていた。どうやら、家の鍵を失くしたようだった。
しかし、オタクは落ち着いていた。ネットで調べれば解決策がすぐに見つかるだろう。オタクはインターネットへの信頼が厚かった。
スマートフォンを取り出すと、幸いにもまだ15%ほど充電が残っていた。
ブラウザに「鍵 なくし」まで打ち込んだとき、手の中のスマートフォンが震えた。寒さで動きにくい指がスマートフォンを落としそうになる。オタクは若干の苛立ちをもって画面上部の通知に目を遣った。
――XXさんがライブ配信をはじめました
オタクは小さく息を呑んだ。オタクの推しは配信の予告をしない...続きを見る
※大した事ないけどBL、ホラー注意
まずいと思った時には遅かった。僕は、よく知った見知らぬ場所に居た。生まれ育った町には人も車もなく音すらしない。黄色い夜空がこの場所のおかしさを一層突きつけた。途方に暮れる。
手の中にスマホ。他の誰にも頼れないこの類の現象をどうにか出来る奴がいて、どういう巡り合わせか、それは僕の同級生だった。だが友人とは言い難く、つまるところ電話するのにも酷く勇気が要る。だが他に手立てもなく、天秤は連絡を取る方に傾いて、僕は【陽キャ】で登録されたソレを押した。
『もし?どったの、ミッキー』
後ろが騒がしい。多分カラオケ。その事に、あ、だの、う、だのコミュ障を更に拗...続きを見る
※幼馴染みが亡くなってる話、ホラーかはお任せします
夕さらば屋戸開け設けて我待たむ 相見に来むと言ふ人を
高名な誰かが詠んだのかもしれないけれど、伝え聞きで終わらせた自分には他の詠み人知らずのものと同じ。
今更詠み人を調べる気もない、調べるのはきっと褒められた事じゃないと分かっている。
都会ではもう、テレビでアニメ映画が放送された時にしか見掛けないと思われる蚊帳を潜り、敷かれた布団の上に腹這いになった。
「来ると言っても夢でなんだっけ」
現代訳するとこんな感じだと、文庫本を片手に講釈を垂れていた幼馴染みは既に亡い。
視界を占領する蕎麦殻の枕を左手で雑に...続きを見る
雲がなく風のよく吹く夜は魔女にとって箒びよりです。相棒を乗せて星の瞬く空を飛び回るのです。
魔女の相棒と言えば、そう、黒猫です。どの猫達も夜を移したような毛をそよそよと揺らし、樫の木で出来た先端にちょんと乗っかります。
チビもまた魔女の相棒でしたが、まだ飛んだことはありません。飼い主のレムは半人前でしたから箒ではなくチビを乗せバイクに跨るのです。それはチビにとって一番の幸いでした。
ある日ママが言いました。
「そろそろレムも箒に乗る頃かしら」
レムのお供はチビの役目です。
納屋の片隅にある箒めがけて走り出します。忘れられたように置かれた箒を倒すと上に乗りました。けれど足はすぐ柄から...続きを見る
レムの一日は自分に魔法をかけることから始まります。変化してから朝食。ミルクには手を伸ばしません。ママが悲しそうなのには見ない振りをして家を出ます。
小さく見えるよう俯き歩くのが癖になりました。
好きな子に長身を理由に振られたのは去年のホリデー。宿木の下に彼と小柄な女の子が並んだ姿に顔を伏せました。視界に入る自分の大きな靴が恥ずかしくて、泣きながら帰ったあの夜の凍えるような冷たい風は、今も心に時折吹くのです。
また巡ってきた憂鬱なこの季節ですが最近では散歩道に慰めてくれるものがありました。
懐っこくて可愛い犬です。大きな体を縮こめるようにいつも丸まっています。食い込み気味の首輪のプレ...続きを見る
『強キャラが夜中、高いとこに立ってコートを風でバサバサいわせてるやつあるじゃん。俺、あれやりたいんだよね』
聞かされた時はまさか実行に移す気だとは思わなかった。
この幼馴染は昔からおかしなことばかり言っているが、さすがに二十代半ばとなった今は落ち着いたと思っていたのに。
深夜二時、「写真を撮ってくれ」と僕が呼び出されたのは24時間営業のコンビニの裏だった。
到着と同時に「おーい」と聞き慣れた声が上から降ってきた。
声のした方を見上げると、壁面の上部に沿ってぽつぽつと設置された電灯を直視してしまい、一瞬目がくらむ。
どうやらこのライトと屋上の組み合わせでコンビニを選んだらしい。確...続きを見る
「夜風が吹くのは誰かに思われているとき」
ヘタクソに炊いたおからみたいにボソボソの声で、彼が言った。
「何それ。聞いたことないけど」わたしは笑うしかないじゃないか。
「祖母がね。言ってて」
「おばあちゃん、ロマンチック」
家の方向がいっしょだから、サークルの飲み会の後はだいたい彼と一緒に夜道を歩く。
安心だ。学生街は軽犯罪が多いから。とはいえ。彼の見てくれは決して頼もしくない。ろくにセットもされていない、小学生男子みたいな短髪で、黒縁メガネが妙に流行りの形だから、ぜんぜん似合っていない。
それでも、一人よりはマシ。……だなんて、言ったりしたら失礼だよね?
ごめんなさい...続きを見る
帰るよ――耳底から湧き上がる母の声を聞きながら、私は靴を履いて家を出た。
外灯が点在する夜道。足元の落ち葉がカサ、と鳴る。風はとても穏やかなのに、なまじ空気が冷たくて、骨の髄まで凍えてしまう。
三ブロック先の国道では、車が次々行き交っている。エンジンのいななきと共に明滅する赤い光に、燃える故郷を思い出す。
終戦から一年が過ぎた頃、母は私の手を引き、家を後にした。
当時、私は六歳だった。生まれも育ちも満州は新京の片田舎だったから、「祖国に帰る」という実感がなかなか湧かなかった。
落ち葉が転がる音に耳を傾け、道路とは反対側の藪へと入っていく。小枝でも踏んで音を立てないよう、細...続きを見る
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