1 ID: HeXgbCJF約2時間前
いつもだったら絶対スルーしていた。スルーっていうか最初から気づ...
いつもだったら絶対スルーしていた。スルーっていうか最初から気づかないっていうか、目に入らなかったと思う。俺社畜だし。基本いっつも眠いし。色んな意味でギリギリで生きてるし。でも、この日の朝だけは違っていた。
最寄りの地下鉄まで30m足らずの曲がり角、電柱の陰にグレーの細身のスーツが鞄を抱えて蹲っていた。酔っ払いの朝帰りなのか通勤中の体調不良なのか、ぴくりとも動かない。顔も見えない。
昨日上司から頂戴した「手に余る案件はさっさと相談しろ、お前一人でこなせることなんかそう無いんだから」っていう小言を思い出した。反論の余地なし。俺に何ができるだろう、通報なりなんなり、そんなこともう誰かがしているに決まってる。でももししてなかったら?
グズグズ思案するその間も、通勤津学の群れがまっすぐ前だけ見て、うずくまるグレースーツとうっかり立ち止まってしまった俺をぐんぐん追い越していった。濁流に俺とそいつだけが取り残されているような、逆に踏ん張ってとどまっているような。
気付いたら俺は一歩踏み出していた。グレースーツの革靴がやけに綺麗で、朝露かなんだかわからないものを弾いて光った。声を、かけてみる。
「あのう……、だ、大丈夫、デスカ……?」
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